ドローンDIPS経路図の座標を管制官が評価:矢野事務所

ドローンDIPS経路図の座標を管制官が評価

 

このページはX(エックス)の投稿を深堀り解説したブログ記事です。


ドローンの飛行が高度化するにつれて、航空交通管制機関との連携は不可欠な要素となります。

特に高高度での飛行を申請する際には、提出する資料の形式が、その後の調整の円滑さに影響します。

先日、ある空域管制官の方から、高高度空域の確認依頼資料としてはDIPS(ドローン情報基盤システム)の経路図が良いという話を伺いました。

管制官が評価するのは、地図の下に座標が並ぶ、あのDIPS特有の経路図です。

その理由は、「経緯度が60進法であり、全範囲が示されているから」とのことでした。

しかし、一方で、運航者側として普段Googleマイマップなどで飛行計画を立てる私にとっては、このDIPS経路図の作成が「少々難儀」に感じるのも事実です。

なぜなら、KMLデータがDIPSにインポートできないからです。

管制機関が求める資料の形式

ドローンの高高度飛行は、有人航空機の飛行経路と重なる可能性が高まるため、管制機関との綿密な調整が必須となります。

管制機関は、空域の安全を確保するために、ドローンの飛行計画を正確に把握する必要があります。

ある空域管制官がDIPSの経路図を評価する理由は、その形式が航空分野で標準的に利用される情報と親和性が高いからだと考えられます。

  • 60進法座標の表示
    DIPSの経路図に表示される経緯度(緯度・経度)は、航空分野で広く用いられる「度・分・秒(60進法)」で表記されています。これにより、管制官は慣れ親しんだ形式で情報を迅速に読み取り、有人航空機の運航情報と比較・照合しやすくなります。
  • 全範囲の明確な表示
    DIPSの経路図は、飛行経路だけでなく、計画された飛行範囲全体が地図上に明確に示されます。これにより、管制官はドローンが影響を及ぼす可能性のある空域を包括的に把握し、空域管理を行いやすくなります。
  • 地図と座標の連携
    地図上に視覚的に飛行経路が示され、その下に具体的な座標データが一覧で並ぶ形式は、直感的にも定量的にも情報を把握する上で効率的です。

これらの特徴により、DIPSの経路図は、管制官が求める正確性と効率性を満たす資料として評価されているのです。

DIPS経路図作成の「難儀」

DIPSの経路図が管制機関から評価される一方で、ドローン運航者にとっては、その作成が「少々難儀」に感じられる現実があります。

その大きな理由の一つが、KMLデータがDIPSに直接インポートできないという機能的な制約です。

KML(Keyhole Markup Language)ファイルとは、Google Earthをはじめとする地理空間情報を扱うソフトウェアで地点や経路、ポリゴン(範囲)などの地理情報を保存・共有するための標準的なファイル形式です。

多くのドローン運航者は、飛行計画の策定にGoogle EarthやGoogleマイマップなどの直感的な外部ツールを活用し、作成した経路をKML形式でエクスポートして管理しています。

しかし、DIPSがKMLファイルを直接インポートする機能に対応していないため、運航者は以下の手間を強いられます。

  • 手作業での座標変換・入力
    Googleマイマップなどで作成した飛行計画の各地点の経緯度情報を、DIPSの入力形式に合わせて手作業で変換し、一つずつ入力し直す必要があります。この手作業での変換・入力作業は、飛行経路が複雑であったり、地点数が多かったりする場合に、膨大な時間的コストとなります。

60進法と10進法、座標表記の実際

ドローンの飛行計画で用いられる座標には、主に「10進法」と「60進法」の二つの表記方法があります。

管制機関が好むDIPSの経路図が60進法である一方、多くの一般の地図サービスやGPSデータは10進法を採用しているため、この変換が実務上の壁となります。

例えば、国土交通省のウェブサイトでも例示されることがある「東京タワー」の緯度・経度をサンプルとして見てみましょう。

  • 10進法表記の例:

    • 緯度: 北緯 35.658517度 (35.658517°N)
    • 経度: 東経 139.745433度 (139.745433°E)
    • これは、GPS機器やGoogleマップなどで一般的に表示される形式です。
  • 60進法表記の例:

    • 緯度: 北緯 35度 39分 30.66秒 (35°39′30.66″N)
    • 経度: 東経 139度 44分 43.56秒 (139°44′43.56″E)
    • この形式が、航空管制や海図などで用いられる、より精密な表記です。

10進法から60進法への変換は、変換ツールなどもあり単純な作業ですが、ヒューマンエラーを誘発しやすく、申請のやり直しや審査の遅延につながる可能性をはらんでいます。

業務効率化への課題

この事例が示すのは、ドローン申請業務における効率化への課題です。

関係機関が求める資料形式と、申請者が日常的に利用するツールの間に連携がないため、手作業でのデータ変換・入力が増加し、結果として申請者の負担を増大させています。

こうしたシステム間の連携不足は、ドローンの社会実装を円滑に進める上でのボトルネックとなる可能性があります。

期待されるシステム連携の未来

DIPSは、ドローンの登録・申請を支える重要な行政システムであり、その改善がドローン産業の発展に不可欠です。

今回の事例が示すような課題に対し、以下の機能改善が期待されます。

  • KMLインポート機能の実装
    DIPSがKMLファイルを直接インポートできるようになれば、多くのドローン事業者や申請代行者の業務効率は劇的に向上します。
  • 座標形式の柔軟性
    10進法座標での直接入力や、入力時の自動変換機能など、よりユーザーフレンドリーなインターフェースが望まれます。
  • 外部ツールとのAPI連携
    将来的には、主要な飛行計画ツールとのAPI連携が実現すれば、申請業務の自動化も視野に入ります。

これらのシステム改善は、申請作業の正確性を高めるだけでなく、管制機関の確認作業もよりスムーズになり、ドローンが安全かつ効率的に空域を利用するための好循環を生み出すでしょう。

まとめ

ドローンの高高度飛行における空域調整では、DIPSの経路図を使うとその情報形式の特性から管制官との調整が円滑に進みます。

一方で運航者にとっては、KMLデータのDIPSへのインポート不可や60進法座標の手作業入力といった実務的な課題が残ります。

これは、ドローン申請業務における効率化の課題であり、今後のDIPSのさらなる機能改善、特に外部ツールとの連携強化が期待されます。

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