
補助者なしの目視外飛行については、「看板やコーンがあれば包括で飛ばせる」と理解されがちです。
しかし実務では、そこまで単純ではありません。
問題は、補助者がいないこと自体ではなく、補助者が本来担う役割を本当に代替できているかです。
本記事では、補助者なし目視外飛行がどのような場合に成り立ち得るのか、包括申請で扱えるのか、それとも個別申請前提なのかを整理します。
このページで分かること
結論|補助者なし目視外は「可能な場合がある」が、現実にはかなり限定的
補助者なしの目視外飛行は、制度上まったく不可能というわけではありません。
ただし、包括申請のままで成立するのは、第三者の立入りを確実に制限できる場所にかなり限られます。
- 第三者が入り得ない構造であること
- 立入管理区画が明確であること
- 補助者の役割を代替する監視・周知・停止判断が機能すること
逆に言えば、これらを十分に説明できない場合は、「補助者なしだから危険」ではなく、「成立条件を満たしていない」という理由で包括では扱いにくくなります。
補助者なし目視外には大きく二つの考え方がある
1.包括申請の中で例外的に扱える場合
標準マニュアル02では、フェンス、コーン、看板等によって第三者の立入りを確実に制限できる場合には、補助者を置かない運用が成り立つ余地があります。
ただしここで重要なのは、「看板を置いたからよい」ではなく、現場構造として本当に第三者が入れないかです。
現実には、この条件を満たす場所はかなり限られます。
- 四方が明確に囲われている
- 出入口が限定されている
- 第三者が偶発的に入る余地がほぼない
この水準に達して初めて、包括の中で補助者なし運用を考えられる余地があります。
2.基本は個別申請前提で整理するケース
実務では、第三者の立入りを「確実に制限できる」と言い切れる現場はそう多くありません。
このため、補助者なし目視外飛行は、飛行経路を特定する必要がある飛行として個別申請で扱うべきケースが中心になります。
特に次のような場合は、包括のまま進めるより、個別申請前提で整理した方が安全です。
- 道路、鉄道、家屋上空が立入管理区画に含まれる
- 第三者の偶発的侵入を完全には排除できない
- 補助者の役割を機体や設備だけで代替しきれない
レベル3飛行の条件
一方で、補助者なし目視外飛行が成立し得る整理として重要なのがレベル3飛行です。
ここでは、単に補助者を置かないだけではなく、補助者の役割を代替するための多層的な安全措置が前提になります。
主な論点は次のとおりです。
①飛行経路は第三者が存在する可能性が低い場所を設定すること
②不測の事態が発生した際に機体を安全に着陸させられる場所を事前に確保し、その際の対処方法を定めていること
③機体が落下する可能性のある範囲を第三者の立入りを管理する区画(立入管理区画)として設定すること
④立入管理区画について近隣住民に周知するなど、当該区画の性質に応じて第三者が立ち入らないための対策を講じること
⑤無人航空機の飛行経路の周辺を飛行する航空機の運航者に事前に飛行予定を周知するとともに、航空情報の発行手続きに係る対応を行い、航空機の飛行の安全に影響を及ぼす可能性がある場合には必要な安全措置を講じること
つまり、補助者なし目視外飛行は「補助者を外す」話ではなく、補助者がいた時よりも厳密な設計を求められる飛行です。
特に重要なのは第三者管理です
補助者なし目視外飛行で最も重要なのは、第三者の立入管理です。
補助者がいる場合、本来は次の役割を担います。
- 飛行経路の直下や周辺の常時監視
- 第三者が近付いた場合の注意喚起
- 必要に応じた飛行中止や回避判断への助言
補助者がいない場合は、この役割を立入管理区画、監視カメラ、周知、停止判断などで代替しなければなりません。
したがって、立入管理区画が曖昧だったり、第三者の侵入経路が読めていなかったりする時点で、成立しないと考えるべきです。
※目視外飛行全体の考え方はこちら
→ 目視外飛行の成立条件と判断整理|矢野事務所
※立入管理区画の整理はこちら
→ ドローン立入管理の「区画」と「措置」の違い
立入管理区画に道路・鉄道・家屋が含まれる場合
立入管理区画に、第三者が存在する可能性を排除できない場所が含まれる場合は、追加の対策が必要です。
道路が含まれる場合
歩行者、自転車、自動車等が管理区画に入ることが予想される場合は、その場所に部分的にカメラまたは補助者を設置し、その場に応じて飛行中止や経路変更等の対策を取る必要があります。
鉄道が含まれる場合
鉄道事業者との調整の上、鉄道が運行する時間帯には飛行させないことが求められます。
※鉄道が絡む場合の考え方はこちら
→ 線路付近ドローン飛行と30m基準の誤解
家屋が含まれる場合
家屋の住民や関係者に飛行日時等について事前説明し、了解を得ること、さらに看板等による周知を行うことが必要です。
監視機能の配備
補助者がいない場合は、監視機能の代替が必要です。
有人機等の監視
機体に灯火を装備すること、あるいは視認しやすい塗色を行うことに加え、飛行経路周辺を監視できるカメラ等を設置し、有人機等を確認した場合には即時着陸等の安全措置を取る必要があります。
自機の監視
機体の位置、進路、姿勢、高度、速度等を遠隔で把握できること、さらに計画飛行経路との差を把握し、逸脱時に戻す、または着陸・着水させる対処が必要です。
自機周辺の気象状況の監視
飛行経路の直下若しくはその周辺、又は機体に風速センサ、カメラ等を設置し、操縦者等が気象状況を確認できることが必要です。運用限界を超える気象状態を把握した場合には、即時に安全措置を取らなければなりません。
操縦者等の教育訓練
補助者なし目視外飛行では、座学・実技による教育訓練を少なくとも10時間以上受けていることが求められます。
ここで重要なのは単なる時間数ではなく、次のような能力です。
a 飛行中に、カメラ等からの情報により、立入管理区画における第三者の有無等、異常状態を適切に評価できること。
b 把握した異常状態に対し、現在の飛行地点、周辺地形、構造物、機体状況を踏まえて最も安全な運航方法を迅速に判断できること。
c 判断した方法により遠隔から適切に操作できること。
必ず個別申請を意識すべき場面
補助者なし目視外飛行は難度の高い飛行であり、様々な要件が求められます。
したがって、限られたエリアで完全に四方を囲われている等、誰が見ても第三者の立入りが制限される場所を除いては、無理に包括申請のままで飛行に踏み切らない方が安全です。
特に次のような場合は、個別申請前提で考えるべきです。
- 第三者の存在可能性を排除できない
- 道路、鉄道、家屋等が立入管理区画に含まれる
- 補助者の役割を設備だけで十分代替できない
包括申請のままレベル3相当の要件を積み上げれば自動的に認められる、というものではない点に注意が必要です。
レベル3.5との関係
補助者なし目視外飛行のルールは、その後レベル3.5の登場で大きく整理が変わりました。
一定の要件が揃っていれば、立入管理措置を行った上で、補助者なしでの目視外飛行を考える場面も出てきます。
この点は別論点として整理した方が分かりやすいため、詳細は下記記事をご参照ください。
まとめ
補助者なし目視外飛行は、制度上可能な場面がある一方、現実にはかなり限定的です。
- 包括で扱えるのは、第三者排除を確実に説明できる場合
- それ以外は個別申請前提で考えるべき場面が多い
- 補助者の代替には、立入管理、監視機能、気象監視、教育訓練まで含めた設計が必要
許可が取れることと、運航が成立することは別問題です。
◆ドローン運航は「事後説明」を前提に設計します◆