ドローン屋根点検・調査の許可条件:包括申請の矢野事務所

物件によって決まるわけではない飛行許可

 

最近、ドローンの飛行用途は多岐にわたって来ました。

その中でも点検需要が益々増えてきてますが、点検する対象物である建物の種類や部分によって

取得する許可が違ってくるのでしょうか。そうではありません。航空法を確認しながら解説します。

急増するドローン点検の需要

例えばマンションやホテル、ビルなどの高層の建物は、10年に1回の点検が義務化されています。

ドローンが出現する以前は、建物が高いせいでわざわざ足場を組んだりロープでゴンドラを下げたりなどして調査点検は大変な仕事でした。

そこを今では、赤外線を積んだドローンを飛ばして写真を撮っていくことで、普通のカメラの映像と赤外線カメラの映像とを通じて、人手をかけずに異常がある箇所を割り出すことができるようになりました。

飛躍的に拡大する需要

この需要は今飛躍的に拡大しています。

ロープやゴンドラでの点検と比べて、何より格段に危険が少なくなることや費用が劇的に減ることが最大のメリットと言えます。

また、家屋の屋根が劣化や台風被害などで壊れてしまった時に、今までは屋根に登るか長い棒を使って屋根の上を撮影していましたが、ドローンを使うことによって、しばらくの間リアルタイムで見ることができるので、これも需要が拡大しているジャンルとなっています。

では、点検のためにドローンを飛ばすには「飛行許可」が必要でしょうか。

物件の種類でなく航空法で規制

結論から言えば、OKの場合もあり、NGの場合もあります。

しかし、これは物件の種類で決まるものではありません。

航空法で定められている空域や飛行法に反するかどうかで、点検ドローン「飛行許可」の要不要が決まってきます。

飛行が規制される空域

100g以上のドローンを飛ばすためには飛行規制がかかります。

まず航空法による飛行規制空域は次の通りです。

①空港等の周辺空域

②人または住宅の密集している地域(人口集中地区(DID))上空

③地表または水面から高さ150m以上の空域

④緊急用務空域

これらの空域での飛行は、操縦ミスや故障などによるドローンの落下で、重大な事故が起こる可能性が高いため、飛行許可を受けなければ飛ばすことはできません。

特に、ビルや家屋の屋根の点検となると最も考えられるのが「人口の密集している地区での飛行」です。

となると人口集中地区(DID)とはどういった場所を言うのか正確な理解が必要となります。

人口集中地区という規制

この人口集中地区(DID)とは、五年に一度行われる国勢調査で定められる地区で以下のような定義になっています。

国勢調査基本単位区及び基本単位区内に複数の調査区がある場合は調査区(以下「基本単位区等」という。)を基礎単位として、

1)原則として人口密度が1平方キロメートル当たり4,000人以上の基本単位区等が市区町村の境域内で互いに隣接して、

2)それらの隣接した地域の人口が国勢調査時に5,000人以上を有するこの地域

以上を「人口集中地区」としています。

なお、人口集中地区は「都市的地域」を表す観点から、学校・研究所・神社・仏閣・運動場等の文教レクリエーション施設、工場・倉庫・事務所等の産業施設、官公庁・病院・療養所等の公共及び社会福祉施設のある基本単位区等で、それらの施設の面積を除いた残りの区域に人口が密集している基本単位区等又はそれらの施設の面積が2分の1以上占める基本単位区等が上記1)の基本単位区等に隣接している場合には、上記1)を構成する地域に含めています。(総務省統計局HP参考)

確かに正確に定義するとこのような内容ですが、これでは建物の点検をしようとしたときにその場所が人口集中地区かどうかは判断できません。

地理院地図で確認

そこで、どの場所が人口集中地区なのかが簡単に調べる方法があります。

【国土地理院】地理院地図「人口集中地区H27年(総務省統計局)」です。

このWEBシステムのメニューの中に「人口集中地区」とあり地図上に色で示してくれています。

また、誰でも使える地理情報システムである「j STAT MAP」という地域分析ツールやドローンフライトナビ(iosのみ対応)というアプリからも人口集中地区を確認できます。

これらのシステムを使って人口集中地区かどうかを確認して下さい。

そして、飛行しようとしている場所が人口集中地区であった場合にはビルの屋上でも屋根の上空でも飛行が禁止されている地区ということですから、飛ばす為には国土交通大臣の許可が必要となります。

人口集中地区に飛行許可が必要な理由は、ドローンの誤操作によって近隣の人や物件に危害を及ぼす可能性があるからです。

従って、逆にドローンが誤操作をされても飛行範囲を逸脱することがないような措置(四方や上部がネット等で囲われている場合等)がなされている場合には、そこは「屋内」とみなされ、飛行許可は不要になります。

高層ビル周辺30mは許可不要

前述の通り、地表から150m以上の飛行は航空法で禁じられている空域の一つです。

この空域は航空機(有人機)の航路ではなく接触や衝突の危険がないとされているからです。

それでは、高度150m以上となる超高層ビルの点検にドローンは飛行させられないのでしょうか?

答えは「飛ばせる」が正解です。

航空法では、150m以上の高さであっても、その構造物から30m以内であれば飛行許可なしで飛ばしても良いとしています。

高層ビルやタワーマンション、鉄塔や送電線もこれに含まれ、飛行可能です。

これは、高層構造物の周辺30mであれば航空機は飛来しない、、、という現実から、許されれている飛行空域なのです。

高構造物周辺の飛行許可
◎許可不要:高度150m以上の30m内※
許可必要:空港周辺・人口集中地区上空・30m未満の距離・緊急用務空域
※高度150m以上が許可不要であって、「人やモノとの距離を30m未満で飛ばすための許可」は別途必要です。

ドローン飛行にあたってのルール

航空法による飛行規制空域であってもそうでなくても、飛行させる場所に関わらず、ドローンを飛行させる場合には、以下のルールを守る必要があります。

[1] アルコール又は薬物等の影響下で飛行させないこと

[2] 飛行前確認を行うこと

[3] 航空機又は他の無人航空機との衝突を予防するよう飛行させること

[4] 他人に迷惑を及ぼすような方法で飛行させないこと

[5] 日中(日出から日没まで)に飛行させること

[6] 目視(直接肉眼による)範囲内で無人航空機とその周囲を常時監視して飛行させること

[7] 人(第三者)又は物件(第三者の建物、自動車など)との間に30m以上の距離を保って飛行させること

[8] 祭礼、縁日など多数の人が集まる催しの上空で飛行させないこと

[9] 爆発物など危険物を輸送しないこと

[10] 無人航空機から物を投下しないこと

上記の「中で、[5]~[10]の飛行ルールを守れないで飛行させる場合には、国土交通大臣の承認が必要となっています。

したがって、飛行許可を受けた空域だったとしても、[5]~[10]を逸脱する飛行については国土交通大臣の承認がなければおこなうことはできないので注意してください。

まとめ

調査・点検も空撮においても、ひとたびドローンを飛ばそうとすると、様々な規制が絡み合い万全な申請が円滑に行えるようになるには相応の時間がかかり、また飛行開始予定日の少なくとも10 開庁日前までに不備等がない状態で申請書を提出する必要があります。

不明点や不安がある場合には、ドローン申請に詳しい専門の行政書士にまずは相談することをお勧めします。

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【番外】場所別の規制と手続き

飛ばせる場所と規制【県別】

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