
10時間飛行経験は「記録」と判断で決まる|矢野事務所
ドローンの飛行許可申請では、操縦者に10時間以上の飛行経歴が求められます。
そのため、「まず10時間を積まなければ」と考える方は少なくありません。
しかし、ここで重要なのは10時間という数字だけではありません。
どの条件で、どの機体で、どの場所で、どのように飛行経験を積んだのか。
そして、その経験を後から説明できる記録として残しているかです。
10時間飛んだから、直ちに安全な運航ができるわけではありません。
実務で問われるのは、飛行時間だけではなく、その経験が申請や運航判断に使える形で整理されているかです。
このページで分かること
10時間飛行経験は申請条件の一つ
10時間飛行経験は、飛行許可申請における操縦者要件の一つです。
ただし、これは「10時間飛べば何でもできる」という意味ではありません。
あくまで、申請上必要となる最低限の経験確認です。
実際の運航では、次のような点が別に問われます。
- どの飛行形態の経験か
- どの機体で飛ばしたのか
- どの場所で飛ばしたのか
- 飛行記録が残っているか
- 飛行条件が法令に反していないか
つまり、単に時間だけを積むのではなく、後から説明できる経験として残すことが重要です。
許可なしでも積める飛行経験
飛行許可を持っていないから、10時間の飛行経験を作れないわけではありません。
航空法上の許可が不要な場所・方法であれば、許可なしでも飛行経験を積むことは可能です。
例えば、人口集中地区ではない場所で、日中、目視内、人又は物件から30m以上離して飛行する場合などです。
ただし、ここで重要なのは、許可不要の条件を外さないことです。
許可不要だと思っていた飛行が、実は人口集中地区だった。
人や物件から30m未満だった。
目視外状態になっていた。
このような場合、その飛行は単なる練習ではなく、違反リスクを含む飛行になってしまいます。
10時間で止まるのは時間不足だけではない
実務では、「10時間に足りないから止まる」という単純な話だけではありません。
むしろ多いのは、時間はあるが、その中身を説明できないケースです。
- 飛行日が分からない
- 飛行場所が分からない
- 使用機体が分からない
- 飛行時間の記録がない
- 誰が確認したのか分からない
この状態では、10時間飛んだと主張しても、申請上の説明として弱くなります。
飛行経験は、飛んだ記憶ではなく、記録として残す必要があります。
重要なのは飛行時間より条件維持
10時間飛行経験で本当に重要なのは、時間の長さだけではありません。
飛行中に条件を維持できていたかです。
たとえば、練習中に人が近づいてきた場合。
風が強くなった場合。
機体の向きが分からなくなった場合。
バッテリー残量が想定より早く減った場合。
このような場面で、どのように判断したかが実務では重要になります。
飛行経験とは、単に操縦時間を積むことではありません。
条件を見て、危ないときに止める経験も含みます。
10時間飛んでも判断力は別問題
10時間の飛行経験があっても、直ちに運航判断ができるわけではありません。
操縦できることと、運航を成立させることは別です。
実務で止まるのは、操縦技術だけではありません。
- 第三者管理ができない
- 中止判断が決まっていない
- 飛行範囲を説明できない
- 補助者の役割が曖昧
- 管理者協議ができていない
このような案件では、10時間以上の飛行経験があっても止まります。
包括申請だけでは足りない案件については、包括申請でも成立しない飛行とは|矢野事務所でも整理しています。
記録に残すべき内容
10時間飛行経験を申請に使うなら、飛行記録を残しておくことが重要です。
少なくとも、次の内容は整理しておきたいところです。
- 飛行日
- 飛行場所
- 使用機体
- 飛行時間
- 飛行目的
- 飛行条件
- 異常の有無
単に「10時間飛びました」ではなく、どのような条件で積んだ10時間なのかが説明できる状態にしておく必要があります。
この記録があることで、申請時だけでなく、後日の確認にも耐えやすくなります。
最大の注意点は機体登録
10時間飛行経験を積む前に、絶対に確認すべきことがあります。
機体登録です。
未登録機で屋外飛行を行うことはできません。
「練習だから」
「少し浮かせただけだから」
という理由では通りません。
10時間以前に、ここで止まるケースは少なくありません。
機体登録制度については、ドローン機体登録は所有者を特定:矢野事務所でも整理しています。
飛行経験は運航成立の一部
10時間飛行経験は重要です。
しかし、それは運航成立の一部にすぎません。
実務では、飛行経験に加えて、次のような整理が必要になります。
- 誰が判断するのか
- 誰が止めるのか
- 第三者状態をどう維持するのか
- 異常時にどう対応するのか
- 後からどう説明するのか
飛行経験は、運航判断を支える材料です。
それ自体が万能の許可証になるわけではありません。
ドローン運航管理については、ドローンは操縦でなく運航管理|矢野事務所でも整理しています。
まとめ
- 10時間飛行経験は申請条件の一つ
- 許可なしでも条件を守れば飛行経験は積める
- 重要なのは時間だけでなく記録
- 条件を外した飛行は申請上も実務上も危険
- 10時間飛んでも運航判断は別問題
- 未登録機での飛行はできない
10時間飛行経験は、ドローン飛行許可申請における重要な要件です。
ただし、10時間という数字だけで運航が成立するわけではありません。
どの条件で飛び、どのように記録し、どのように判断したのか。
そこまで説明できて初めて、申請にも実務にも使える経験になります。
◆ドローン運航は「事後説明」を前提に設計する◆
許可があっても、現場で止まる案件は少なくありません
ドローン運航は「許可が取れるか」ではなく、現場で最後まで成立するかで判断する必要があります。
- 第三者管理は維持できますか?
- 監視体制は機能しますか?
- 中止判断は定義されていますか?
- 関係者への説明は通りますか?
これらが整理されていない案件は、許可があっても現場で止まります。
※飛行許可申請「のみ」のご相談にも対応しています

