緊急用務空域は「飛ばせるか」で判断してはいけない|矢野事務所

緊急用務空域は「飛ばせるか」で判断してはいけない|矢野事務所

 

ドローンを飛行させる前には、緊急用務空域に該当していないかを必ず確認する必要があります。

緊急用務空域は、通常の飛行許可や包括申請の延長で考えてよい空域ではありません。

消防、警察、海上保安庁、防災ヘリ、ドクターヘリ、自衛隊機など、緊急用務を行う有人航空機の安全を確保するために指定される空域です。

ここでは、ドローン側の「飛ばせる理由」より、有人機活動を妨げないために「止める判断」が最優先になります。

国土交通省の緊急用務空域情報は、飛行前に必ず確認してください。

国土交通省|無人航空機の飛行ルール・緊急用務空域

緊急用務空域は有人機優先の空域

緊急用務空域とは、大規模災害、山火事、捜索救助、警察業務、消防活動などのため、有人航空機の飛行安全を確保する必要がある場合に、国土交通大臣が指定する空域です。

この空域が指定されると、無人航空機の飛行は原則として禁止されます。

重要なのは、通常時に飛べる場所でも、緊急用務空域に指定された瞬間に、ドローン運航の前提が変わることです。

包括申請がある。

許可を取得している。

飛行計画を立てていた。

発注者との予定がある。

これらは、緊急用務空域では飛行継続の理由になりません。

有人機による救助・消防・警察活動が最優先です。

飛行前確認は義務として扱うべき

緊急用務空域は、災害や事故の発生状況に応じて突然指定されることがあります。

そのため、ドローン運航者は、飛行開始前に国土交通省のホームページ等で、予定空域が緊急用務空域に該当していないかを確認する必要があります。

前日に確認しただけでは足りません。

当日、飛行直前にも確認する必要があります。

災害対応は状況が急変します。

飛行開始前に問題がなかったとしても、直前に指定される可能性があります。

したがって、実務では、緊急用務空域の確認を飛行前チェックリストに組み込むべきです。

包括申請があっても飛ばせない

緊急用務空域で特に誤解されやすいのが、包括申請との関係です。

包括申請を持っていても、緊急用務空域ではそのまま飛行できません。

空港周辺、150m以上、DIDなどの許可があっても、緊急用務空域に指定されていれば、別の次元で飛行が制限されます。

これは、通常の許可条件を満たしているかどうかの問題ではありません。

有人航空機による緊急活動を妨げないことが最優先されるためです。

包括申請の限界については、包括申請でも成立しない飛行とは|矢野事務所でも整理しています。

ここでは「運航成立」より「即時中止」が中心

通常のドローン運航では、現地条件を整理し、第三者管理や補助者配置、中止判断を設計して、運航成立性を検討します。

しかし緊急用務空域では、その考え方だけでは足りません。

この空域では、ドローン側の運航成立性よりも、有人機活動を妨げないことが優先されます。

したがって、判断の中心は次の点です。

  • 飛行前に緊急用務空域を確認したか
  • 指定されていた場合に飛行を中止できるか
  • 飛行中に指定や指示があった場合に即時中止できるか
  • 有人機接近時に速やかに降下・退避できるか
  • 関係機関の指示に従う体制があるか

緊急用務空域は、「飛ばす理由」を積み上げる空域ではありません。

止める判断を最優先にする空域です。

災害時の善意飛行ほど危険になる

災害時には、被害状況を確認したい、現地を撮影したい、何か役に立ちたいという気持ちが生じます。

しかし、独自判断によるドローン飛行は、救助活動の妨げになる可能性があります。

特に、消防防災ヘリ、警察ヘリ、ドクターヘリ、自衛隊機などが活動している場合、ドローンの存在は有人機の安全に重大な影響を与えます。

善意であっても、結果として有人機を止めることになれば、救助活動全体を妨げることになります。

災害時のドローン運航では、通常時以上に「飛ばさない判断」が重要です。

特例がある場合でも自由飛行ではない

事故や災害時には、国、地方公共団体、又はこれらの依頼を受けた者が、捜索救助のために無人航空機を飛行させる場面があります。

ただし、これは「誰でも災害時に自由に飛ばせる」という意味ではありません。

特例的な運航であっても、有人航空機の航行安全、地上及び水上の人や物件の安全を損なわないよう、安全確保を行う必要があります。

つまり、災害時のドローン運航は、通常時より軽くなるのではなく、むしろ重い責任を伴います。

独自判断ではなく、関係機関からの依頼、連絡体制、飛行範囲、停止条件を明確にする必要があります。

関係機関の指示があれば従う

緊急用務空域やその周辺で、関係機関から飛行中止、飛行計画変更、情報提供などを求められた場合は、それに従う必要があります。

この場面では、現場判断で「大丈夫」と考える余地は極めて狭くなります。

有人機の活動状況は、ドローン運航者側から全て把握できるものではありません。

したがって、消防、警察、海上保安庁、空港事務所、航空関係機関等から指示や要請があった場合には、飛行継続ではなく中止・退避を前提に考えるべきです。

ドローン運航は、操縦技術だけでは成立しません。

この点は、ドローンは操縦でなく運航管理|矢野事務所でも整理しています。

契約書・見積書にも中止条件を入れる

業務として空撮、点検、測量等を請け負う場合、緊急用務空域の指定によって飛行が中止・延期になることがあります。

これは、操縦者の都合ではありません。

有人機活動を妨げないための安全上の中止です。

そのため、契約書や見積書には、緊急用務空域の指定、災害対応、関係機関からの指示、天候悪化などにより飛行できない場合の扱いを明記しておくべきです。

キャンセル料、延期、再実施、費用負担の扱いを事前に決めておかなければ、発注者との間でトラブルになります。

緊急用務空域は、法令上の問題であると同時に、業務設計上のリスクでもあります。

第三者管理よりも有人機安全を優先する場面

通常のドローン運航では、第三者の立入管理や地上の安全確保が重要です。

しかし緊急用務空域では、それに加えて有人機の安全が最優先の問題になります。

地上に人がいない。

高度を低くしている。

補助者を置いている。

このような事情があっても、有人機活動を妨げる可能性があるなら飛行継続はできません。

第三者管理の考え方は、第三者と関係者の整理で止まる理由:矢野事務所でも整理していますが、緊急用務空域ではさらに有人機安全が上位に来ます。

まとめ

緊急用務空域は、通常の許可取得や包括申請の延長で判断してはいけません。

消防、警察、海上保安庁、防災ヘリ、ドクターヘリ、自衛隊機などの有人機活動を守るための空域です。

したがって、重要なのは「飛ばせるか」ではありません。

指定されていないか確認し、指定されていれば飛ばさないこと。

飛行中に指示や危険があれば、直ちに止めること。

災害時のドローン運航では、飛ばす判断より、止める判断が問われます。

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