
ドローン規制は「許可」より成立条件で読む|矢野事務所
ドローンの法規制は、初心者や国家資格の学習者にとって分かりにくい分野です。
理由は、単に「飛ばしてよいか」だけでは判断できないからです。
航空法では、機体、飛行場所、飛行方法、操縦者、機体認証、安全確保措置など、複数の要素が組み合わさっています。
そのため、まず必要なのは、細かい条文を暗記することではありません。
ドローン規制の全体像をつかみ、その飛行が現場で成立するかを判断できる状態にすることです。
本記事では、航空法におけるドローン規制の基本構造を、初心者にも分かるように整理します。
このページで分かること
ドローン規制の二大対象
航空法がドローンについて規制している対象は、大きく二つに分かれます。
- 無人航空機という機体の分野
- 特定飛行という飛行形態の分野
この二つを押さえることが、ドローン規制を理解する入口です。
逆に言えば、航空法上の無人航空機に該当しない機体や、特定飛行に該当しない飛行形態については、原則として航空法上の飛行許可・承認の問題は発生しません。
ただし、ここで注意が必要です。
航空法上の許可が不要であっても、条例、管理者ルール、小型無人機等飛行禁止法、現場条件によって飛行が止まることがあります。
つまり、「航空法の規制対象外」と「どこでも自由に飛ばせる」は同じ意味ではありません。
無人航空機とは
航空法では、無人航空機とは、人が乗ることができない構造で、遠隔操作又は自動操縦により飛行させることができるものを指します。
現在の実務では、航空法の無人航空機規制の対象となるのは、原則として重量100g以上の機体です。
ここで押さえるべきキーワードは、次の三つです。
- 人が乗ることができない構造であること
- 遠隔操作又は自動操縦で飛行できること
- 重量100g以上であること
この条件に該当する機体は、航空法上の無人航空機として規制対象になります。
一方、100g未満の機体は航空法上の無人航空機規制の対象外となる場面があります。
しかし、100g未満だからといって自由に飛ばせるわけではありません。
公園条例、施設管理者のルール、重要施設周辺の規制など、別のルールで止まることがあります。
特定飛行とは
ドローン規制を理解するうえで、もう一つ重要なのが特定飛行です。
特定飛行とは、航空法で定められた特定の空域又は飛行方法による飛行をいいます。
大きく分けると、次の二つです。
飛行空域
- 空港周辺の空域
- 150m以上の高さの空域
- 緊急用務空域
- DID地区上空の空域
飛行方法
- 夜間飛行
- 目視外飛行
- 人又は物件との距離30m未満の飛行
- 催し場所上空の飛行
- 危険物輸送
- 物件投下
これらに該当する飛行は、原則として特定飛行として整理されます。
特定飛行に該当する場合は、許可・承認、機体認証・技能証明、安全確保措置などの整理が必要になります。
ただし、ここでも重要なのは、単に「特定飛行に該当するか」だけではありません。
その条件を現場で維持できるかです。
特定飛行を行うための三つの考え方
特定飛行は、原則として制限されています。
しかし、一定の条件を満たすことで、特定飛行を行うことができます。
実務上は、次の三つの考え方で整理すると分かりやすくなります。
- 国土交通大臣の許可・承認による飛行
- 機体認証と技能証明による飛行
- 安全確保措置による飛行
ただし、いずれの場合も「制度上できる」だけでは足りません。
現場で第三者状態を維持できるか。
補助者機能が成立しているか。
中止判断が決まっているか。
後から説明できるか。
ここまで整理して初めて、運航として成立します。
国土交通大臣の許可・承認による飛行
特定飛行を行う代表的な方法が、国土交通大臣の許可・承認を受けることです。
たとえば、DID地区上空、夜間飛行、目視外飛行、30m未満飛行、催し場所上空などでは、許可・承認が問題になります。
ただし、許可・承認を受けたからといって、現場で必ず飛行できるわけではありません。
許可は、一定の条件のもとで飛行を認めるものです。
その条件を現場で維持できなければ、運航は成立しません。
最もポピュラーな包括申請で許可を取っていても、飛行が成立しない場合があります。
包括申請でも成立しない飛行については、包括申請でも成立しない飛行とは|矢野事務所でも整理しています。
機体認証と技能証明による飛行
次に、機体認証と技能証明による飛行があります。
これは、一定の安全性を満たした機体と、一定の技能を有する操縦者を前提に、特定飛行を行う仕組みです。
機体認証は、機体の強度、構造、性能などが安全基準に適合しているかを確認する制度です。
技能証明は、操縦者が必要な知識と技能を有していることを証明する制度です。
ただし、機体認証や技能証明があれば、すべての飛行が自動的に成立するわけではありません。
対象となる飛行条件、機体の運用条件、現場での安全確保措置を確認する必要があります。
資格があることと、その現場で運航が成立することは別問題です。
立入管理措置の意味
機体認証や技能証明を理解するうえで重要なのが、立入管理措置です。
立入管理措置とは、操縦者や補助者以外の第三者が飛行経路下に立ち入らないよう管理する措置です。
この立入管理措置の有無によって、機体認証や技能証明の区分も変わります。
ここで大事なのは、立入管理措置は単なる言葉ではないということです。
実務では、次のような点が問われます。
- 第三者が飛行経路下に入らない状態を維持できるか
- 補助者が機能しているか
- 立入範囲を説明できるか
- 第三者が近づいた場合に止められるか
第三者と関係者の整理については、第三者と関係者の整理で止まる理由:矢野事務所でも整理しています。
安全確保措置による飛行
特定飛行の一部については、安全確保措置を講じることで許可・承認の対象外となる場合があります。
代表的なものが係留飛行です。
係留とは、ドローンを十分な強度を有する紐などでつなぎ、飛行範囲を制限する措置です。
ただし、係留すれば何でも許可不要になるわけではありません。
実務では、次の点が重要になります。
- 係留索の長さ
- 係留索の強度
- 係留範囲内の物件の有無
- 立入管理措置
- 第三者が入らない状態の維持
ワイヤーを付けただけでは、運航は成立しません。
係留でも、第三者管理や中止判断が崩れれば現場で止まります。
30m規制は距離だけで読まない
人又は物件との距離30m未満の飛行は、特定飛行の一つです。
しかし実務では、30mという数字だけでは判断できません。
飛行開始時に30mを確保していても、飛行中に人や車両が近づけば、その状態は崩れます。
重要なのは、30mを一瞬確保することではありません。
第三者や物件との距離状態を維持できるかです。
30m規制の考え方については、30m規制は「距離」ではなく状態維持|矢野事務所でも整理しています。
制度を覚えるだけでは現場で止まる
ドローン法規を学ぶとき、制度名や許可要件を覚えることは大切です。
しかし、実務ではそれだけでは足りません。
制度上は飛ばせるように見えても、現場で止まる案件があります。
たとえば、次のような場合です。
- 第三者状態を維持できない
- 管理者調整ができていない
- 補助者の役割が曖昧
- 中止判断が決まっていない
- 事故時に説明できない
つまり、ドローン規制は「覚える」だけではなく、「現場で成立するか」を見て読む必要があります。
ドローン規制は運航管理で読む
ドローンの規制は、操縦者だけの問題ではありません。
誰が現場を確認するのか。
誰が第三者管理をするのか。
誰が中止判断を行うのか。
誰が記録を残すのか。
誰が後から説明するのか。
ここまで整理して初めて、規制を実務に落とし込むことができます。
これらの整理と運用を「運航管理」と言います。
ドローン運航管理については、ドローンは操縦でなく運航管理|矢野事務所でも整理しています。
まとめ
ドローン規制の基本は、無人航空機と特定飛行を理解することです。
無人航空機に該当するか。
特定飛行に該当するか。
許可・承認が必要か。
機体認証や技能証明で対応できるか。
安全確保措置で整理できるか。
これらは、制度理解として重要です。
しかし、実務で本当に問われるのは、その先です。
その飛行は、現場で最後まで成立すると説明できるのか。
この視点がなければ、制度上は可能に見えても現場で止まります。
ドローン規制は、「許可」より成立条件で読む必要があります。
国土交通省:無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルール
◆ドローン運航は「事後説明」を前提に設計する◆
許可があっても、現場で止まる案件は少なくありません
ドローン運航は「許可が取れるか」ではなく、現場で最後まで成立するかで判断する必要があります。
- 第三者管理は維持できますか?
- 監視体制は機能しますか?
- 中止判断は定義されていますか?
- 関係者への説明は通りますか?
これらが整理されていない案件は、許可があっても現場で止まります。
※飛行許可申請「のみ」のご相談にも対応しています

