
プロペラガードなし飛行は監視設計で決まる|矢野事務所
今回紹介するのは、DID上空・目視外・道路横断を含む物流飛行実証準備として行った、個別申請の実例です。
ただし、本記事の主題は「許可が取れた」という話ではありません。
重要なのは、プロペラガードを装着しない状態で、危害軽減機能をどう代替したかです。
一般的に、DID上空や人・物件30m未満飛行では、プロペラガードが重要な安全措置として扱われます。
しかし今回の計画では、物流飛行を見据え、ペイロード確保のためにプロペラガード非装着を前提としていました。
つまり問題は、「ガードを付けるか」ではありません。
第三者への危害軽減機能を、別の方法でどう成立させるかです。
このページで分かること
物流飛行を見据えた試験飛行
今回の飛行は、将来のレベル4物流飛行を見据えた試験的位置づけでした。
ただし、実施したのはレベル4そのものではありません。
補助者あり・目視外のレベル2飛行です。
しかし、DID上空、直線1.2km飛行、道路横断、目視外という条件は、将来の有人地帯物流飛行をかなり意識した構造でした。
つまり今回の関心は、「許可が出るか」だけではありません。
有人地帯物流飛行では、どのような安全設計が求められるのかを探ることにありました。
プロペラガード非装着という前提
使用機体はMATRICE300RTKでした。
本計画では、最初からプロペラガードを装着しない方針でした。
理由は、物流飛行を前提としたペイロード確保です。
プロペラガード4枚で約520g。
物流飛行では、この重量が配送可能重量や飛行性能へ影響します。
しかし、DID上空や30m未満飛行では、通常は「第三者及び物件に接触した際の危害軽減機能」が必要になります。
つまり、プロペラガードを外すなら、その代替安全機能を説明しなければなりません。
ここで重要なのは、「ガードなしでも大丈夫」と言うことではありません。
ガードが担っていた安全機能を、別の方法で代替することです。
代替したのは監視機能
今回の飛行では、危害軽減機能の代替として、地上監視体制を大幅に強化しました。
具体的には、飛行経路下へ第三者が侵入しないよう、飛行経路に沿って補助者を配置しています。
配置間隔は約200m。
1.2km飛行に対し、7地点へ補助者を配置しました。
ここで重要なのは、単に人数を増やしたことではありません。
第三者接近を早期検知し、飛行中止まで含めて状態維持する構造を作ったことです。
補助者は、第三者接近時に操縦者へ即時連絡し、必要に応じて飛行を中止します。
つまり今回の代替安全設計の本体は、「監視機能の多重化」でした。
道路横断で問題になること
今回の飛行では、飛行経路下に複数の道路が存在していました。
ここで重要になるのが、第三者上空問題です。
道路は、人や車両が常時変動します。
つまり、飛行前に安全でも、飛行中に第三者状態が崩れる可能性があります。
特に、目視外飛行では、操縦者が直接現地確認できません。
そのため、道路横断時には通常以上に監視設計が重要になります。
今回の案件では、道路横断部分について飛行マニュアルへ追加記載を行い、補助者による監視・中止判断・連絡体制を強化しました。
つまり問題は、道路を横断したかではありません。
第三者状態が崩れた瞬間に止められる構造かです。
目視外飛行で本当に問われること
目視外飛行では、自動操縦、機体監視、フェールセーフ機能などが求められます。
しかし実務上、本当に重いのはそこだけではありません。
問題は、操縦者が直接見えない場所で、地上状態をどう把握するかです。
今回の飛行では、DJI PILOT2による自動操縦、純正カメラ、フェールセーフ機能を用意しました。
しかし、それだけでは終わりません。
第三者侵入。
道路横断。
経路下の安全状態。
これらは、地上側の監視体制がなければ維持できません。
つまり、目視外飛行の本体は「画面で見えるか」だけではありません。
現地状態を維持できるかです。
目視外飛行全体の考え方は、目視外飛行の成立条件と判断整理|矢野事務所でも整理しています。
安全装備を減らすほど監視設計が重くなる
プロペラガードを外す。
補助者を減らす。
物流重量を増やす。
こうした設計変更をするほど、別の安全機能を強化しなければ成立しません。
今回の飛行では、プロペラガード非装着という条件の代わりに、監視体制、中止判断、周知、補助者配置を積み上げています。
つまり、安全装備を減らしたのではありません。
安全機能を別の形で再設計しています。
物流飛行は「監視機能」で決まる
将来の物流飛行では、単に機体性能だけでは成立しません。
特に有人地帯上空では、第三者状態をどう維持するかが重要になります。
どこを飛ぶのか。
道路をどう横断するのか。
第三者が近づいたら誰が止めるのか。
目視外状態で地上をどう監視するのか。
つまり、物流飛行の本体は運航管理です。
ドローンは操縦でなく運航管理|矢野事務所でも触れているように、現在の高難度飛行では、機体性能より現場全体を維持する構造が重要になります。
代替安全設計が本体
今回の案件は、「プロペラガードなしでも飛ばせた」という話ではありません。
重要なのは、プロペラガードが担っていた安全機能を、どのように代替したかです。
補助者。
監視地点。
道路横断対策。
周知。
中止判断。
地上監視。
これらを積み上げて初めて、DID上空・目視外・道路横断飛行が成立しました。
つまり、高難度飛行の本体は、許可取得そのものではありません。
安全機能をどう再設計するかです。
◆ドローン運航は『事後説明』を前提に設計する◆
許可があっても、現場で止まる案件は少なくありません
ドローン運航は「許可が取れるか」ではなく、現場で最後まで成立するかで判断する必要があります。
- 第三者管理は維持できますか?
- 監視体制は機能しますか?
- 中止判断は定義されていますか?
- 関係者への説明は通りますか?
これらが整理されていない案件は、許可があっても現場で止まります。
※飛行許可申請「のみ」のご相談にも対応しています

