ドローン運航の判断設計・体制構築

イベント上空ドローン墜落事故を解説:包括申請の矢野事務所

 

機体登録、リモートID、100g以上規制、操縦ライセンス、機体認証など、近年の小型無人航空機に関する法改正は急速に進んでいます。

しかし、その背景には必ず事故や事件があります。

つまり、今ある規制の多くは、抽象的な机上ルールではなく、実際に起きた事故を受けて積み上がってきたものです。

ドローンの安全を考えるときに大事なのは、「何が禁止されているか」だけではなく、「なぜそこまで求められるようになったのか」を知ることです。

この場所で事故にならずに運航できるかは、条件によって変わります。

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イベント上空からのドローン落下

ドローンの事件事故として、全国ニュースでも大きく報じられた有名な事故があります。

ロボフェスおおがきドローン墜落事故
2017年11月7日、岐阜県大垣市のイベント会場で、お菓子をまいていた無人航空機ドローン(直径約85cm、重さ約4kg)が高さ約10mから落下し、地上にいた来場者に衝突。子ども4人を含む6人が擦り傷などの軽傷を負いました。大阪航空局は、飛行許可を得ていたものとは別の機体を飛ばしたとして、この業者に厳重注意を行いました。

結果的に軽傷で済みましたが、不幸中の幸いです。

もし当たりどころが悪かったり、さらに大きな機体だったりすれば、重大事故になっていてもおかしくありませんでした。

この事故を受けて、国土交通省は催し場所上空の飛行に関する審査要領を見直しました。

ここで重要なのは、事故のあとに「立入禁止区画」の考え方が明確化されたことです。

イベント上空立入禁止区画

〇20m未満・・・・・・・飛行範囲の外周から30m以内の範囲
〇20m以上50m未満・・・  〃 40m〃
〇50m以上100m未満・・・ 〃 60m〃
〇100m以上150m未満・・・〃 70m〃
〇150m以上・・・・・・・飛行範囲の外周から落下距離(当該距離が70m未満の場合にあっては70m)以内の範囲

それまで曖昧だった「どこまで第三者を遠ざけるか」が、飛行高度に応じた数字として明文化されました。

さらに、申請時と同じ条件下での十分な飛行実績、プロペラガード、風速条件、飛行速度、補助者配置、注意喚起など、催し上空飛行の成立条件は大きく厳格化されました。

つまり、イベント上空飛行は「許可を取れば飛ばせる」ではなく、「立入禁止区画を成立させて初めて飛ばせる」に変わったのです。

関空滑走路閉鎖

次は、人身事故ではないものの、ドローン墜落や侵入がどれだけ大きな社会的影響を持つかを示した事例です。

関西空港滑走路閉鎖事件
2019年11月9日午前8時ごろ、関西国際空港の滑走路付近で職員がドローンのようなものを目撃し、安全確認のため全ての滑走路を閉鎖。航空機の離着陸が停止されました。到着便19便、出発便25便の計44便に影響が出ました。関空では同年10月19日と11月7日にも同様の飛行物体が確認されており、いずれも捜索したものの発見には至っていません。

結局、犯人も機体も見つかっていません。

しかし、小さな物体であっても、空港にとっては無視できません。

ドローンは重量のある飛行体であり、万が一、有人航空機に衝突すれば重大事故に直結するおそれがあります。

そのため空港周辺では、「実際にぶつかったか」ではなく、「ぶつかる可能性があるか」で運用停止判断が行われます。

この流れを受けて、小型無人機等飛行禁止法も改正され、空港周辺も対象に加えられました。

それまで航空法上は200g以上の無人航空機が主な対象でしたが、これを200g未満も含めて広く禁止対象に広げる方向へ進んだのです。

また、違反機に対しては、警察官等が退去命令や妨害措置、必要な措置を行えるようになりました。

飛行前のチェックと万が一の賠償

このほかにも、姫路城への衝突、三社祭での墜落、官邸への飛来など、ドローン事故・事件は繰り返し起きています。

海外では、プロペラが幼児の目に当たり失明した事例も報じられています。

飛行前のチェック

何より最優先すべきなのは安全です。

そのために必要なのは、飛行前の確認です。

飛行計画、リスクアセスメント、周辺状況、健康状態、プロペラ、プロペラガード、バッテリー、RTH設定、立入管理、補助者体制。

有人機のパイロットが離陸前に何重にも確認するのと、本質は同じです。

「少し飛ばすだけ」「短時間だけ」という感覚で、この確認を省いた瞬間に事故の確率は一気に上がります。

賠償責任

事業者であれば加入していることが多いですが、個人・趣味飛行の方では機体保険だけで賠償保険に入っていないことがあります。

しかし、事故が起きたときに重要なのは、機体の修理費よりも、相手方への補償です。

自分を守る意味でも、相手方に十分な補償をする意味でも、賠償保険は必須です。

年間数千円程度のものや、1日単位のスポット保険もあります。頻度に応じて、最低限の備えはしておくべきでしょう。

事故が示していること

ここまで見てきた事故や事件に共通するのは、単なる操縦ミスの話ではないということです。

機体の選定、第三者管理、飛行前確認、現場説明、保険、そして「その飛行を成立させる設計」が不十分だったときに事故は起きています。

つまり、事故は操縦者個人の問題というより、「運航設計の失敗」として起きることが多いのです。

まとめ

ドローンの法改正は、抽象的に厳しくなっているのではありません。

その背景には、イベント上空からの落下、空港閉鎖、人身事故や重要施設侵入といった、現実に起きた事故や事件があります。

規制は「面倒なルール」ではなく、過去の事故を繰り返さないための記録でもあります。

ドローン産業やドローン活用に将来性があることは確かですが、安全やコンプライアンスという基盤がなければ、その用途はいつまでも限定されたものにとどまります。

このような事故は、飛行前の判断設計が甘いと起きます。

飛行場所、第三者管理、補助者体制、保険、機体条件まで整理して初めて、運航は成立します。

同じ飛行でも、条件次第で危険性も結論も変わります。

「ドローンが山火事消火を邪魔した事件」を見る

「ドローンの首相官邸落下事件」を見る

許可があっても、現場で止まる案件は少なくありません

ドローン運航は「許可が取れるか」ではなく、現場で最後まで成立するかで判断する必要があります。

  • 第三者管理は維持できますか?
  • 監視体制は機能しますか?
  • 中止判断は定義されていますか?
  • 関係者への説明は通りますか?

これらが整理されていない案件は、許可があっても現場で止まります。

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