
追加基準は「運航成立」で変わる|矢野事務所
ドローンの飛行許可申請では、すべての飛行に共通する基本的な基準があります。
しかし、空港周辺、夜間、目視外、30m未満、催し上空など、リスクが高くなりやすい飛行では、それだけでは足りません。
そのような飛行では、通常の基準に加えて、飛行の種類ごとに追加で確認される安全措置があります。
これが、いわゆる「追加基準」です。
難しい言葉に見えますが、要するに、その飛行方法や空域だからこそ必要になる追加の安全条件です。
ただし実務では、追加基準を知っているだけでは足りません。
重要なのは、その条件で本当に運航として成立すると説明できるかです。
このページで分かること
追加基準は制度、実務は成立条件
追加基準は、許可審査で確認される制度上の要件です。
しかし実務では、それだけで飛行の可否は決まりません。
実際に見るべきなのは、次の3つです。
- 制度上の基準を満たしているか
- 第三者管理や立入管理が成立しているか
- 現場で説明しきれる運航設計になっているか
つまり、追加基準を知ることと、案件を成立させることは別問題です。
特に、目視外飛行では、許可の有無だけでなく、第三者管理や立入管理まで含めて判断する必要があります。
また、立入管理区画の考え方は、制度説明よりも実務判断に直結します。
追加基準が問題になる飛行
飛行許可申請で追加基準が問題になるのは、主に次のような空域や飛行方法です。
- 空港周辺空域、緊急用務空域、高度150m以上の空域
- 人又は家屋の密集する地域(DID)上空
- 夜間飛行
- 目視外飛行
- 人又は物件との間に30mを保てない飛行
- 多数の者が集合する催し場所上空
- 危険物輸送
- 物件投下
これらは、単に「危ない飛行」とまとめて考えるべきものではありません。
それぞれ、何が危険なのか、どの状態を維持すべきなのか、どこで止めるべきなのかが異なります。
空港周辺・150m以上・緊急用務空域
空港周辺、高度150m以上、緊急用務空域では、地上側の安全管理だけでは足りません。
有人機との関係、空域監視、関係機関との連絡、当日の運航状況が問題になります。
制度上は、航空機からの視認性、関係機関との事前調整、常時連絡が取れる体制、補助者配置や監視体制などが見られます。
ただし実務では、単に「調整した」「連絡先を持った」では足りません。
いつ、誰と、どういう条件で飛ばすのかを説明できるかが問われます。
空港周辺空域は、高さや位置だけでは判断しきれません。
DID上空で問われる第三者管理
DIDでは、第三者や物件に危害を与えないための構造や運航体制が求められます。
典型的には、プロペラガード等による被害軽減措置、適切な飛行経路、補助者による監視、飛行経路周辺への第三者立入防止などです。
ただし実務では、DIDだから危ないという話ではありません。
本質は、第三者が立ち入らない状態をどう維持するかです。
第三者が一時的にいないだけでは足りません。
飛行中に人が流入した場合、誰が発見し、誰が止めるのかまで決めておく必要があります。
夜間飛行で問われる視認性と停止判断
夜間飛行では、視認性と操縦能力が中心になります。
機体の姿勢や方向を確認できる灯火、夜間に飛行経路を維持できる操縦能力、日中の事前確認、離着陸地点の明確化、補助者による監視などが問題になります。
制度上はこう整理されますが、実務では「夜に飛ばせるか」より、夜でも止める判断ができるかが重要です。
見えにくい環境では、異常の発見が遅れます。
そのため、飛行経路、補助者の位置、離着陸地点、照明環境、停止条件を先に整理しておく必要があります。
目視外飛行で問われる確認機能
目視外飛行は、追加基準の中でも特に重い論点です。
操縦者が機体を直接見ないため、機体外の状況をどう確認するかが問題になります。
求められるのは、機体外の状況を確認できる装備、位置や異常を把握できる地上体制、フェールセーフ機能、第三者管理、航空機との衝突回避措置、緊急時の着陸場所と手順などです。
特に補助者なしで飛ばす場合は、制度要件が一段重くなります。
補助者なし目視外飛行は、制度を知るだけでは判断できません。
30mを保てない飛行で問われる距離維持
人又は物件との間に30mを保てない飛行も、実質的には第三者管理の問題です。
制度上は追加基準の対象ですが、現場で問われるのは、なぜ30m未満で飛ばす必要があるのか、どう危害防止するのか、その説明が現場で通るかです。
30m規制は、単なる距離の話ではありません。
第三者や物件との安全距離をどう維持し、維持できなくなったときにどう止めるのかという問題です。
30m規制の考え方は、距離だけでなく物件・第三者管理まで含めて整理が必要です。
催し場所上空で問われる立入管理
催し上空飛行では、第三者上空を飛ばさないことが大前提です。
そのうえで、飛行経路の特定、立入禁止区画の設定、補助者配置、風速条件による中止判断などが求められます。
この論点は、制度上の要件だけでなく、主催者との調整や現地運営まで絡みます。
催し上空では、人の動きが固定されません。
そのため、立入禁止区画を作るだけでなく、その区画を維持できるかが重要になります。
危険物輸送・物件投下で問われる説明可能性
危険物輸送や物件投下では、機体性能、操縦技能、安全確保体制がより重く見られます。
特に物件投下では、不用意に投下しない機構、投下実績や訓練、立入管理区画の設定、補助者または代替措置などが問題になります。
つまり、単に「投下できる」ではありません。
安全に投下し、後から説明できるかが判断軸です。
危険物輸送や物件投下は、現場での失敗が直接被害につながりやすい飛行です。
だからこそ、飛行前に停止条件、立入管理、補助者機能、記録を整理しておく必要があります。
実務で本当に大事なこと
追加基準を知ることは大事です。
しかし案件が止まる理由は、たいてい制度の暗記不足ではありません。
実務で止まるのは、次のような場面です。
- 第三者管理の設計が弱い
- 補助者や監視体制が曖昧
- 中止判断が整理されていない
- 対外説明ができない
- 現場で条件を維持できない
つまり、重要なのは、追加基準を満たすことではなく、運航として成立させることです。
飛行許可申請では、制度上の要件を満たすことが入口になります。
しかし、実際の現場では、第三者管理、補助者機能、中止判断、説明可能性まで含めて設計しなければなりません。
まとめ
ドローンの追加基準は、リスクが高くなりやすい空域や飛行方法について、追加の安全措置を求めるものです。
空港周辺、DID、夜間、目視外、30m未満、催し上空、危険物輸送、物件投下などでは、それぞれ確認すべき論点が異なります。
ただし実務では、追加基準を満たせば終わりではありません。
必要なのは、次の整理です。
- 制度上の基準を満たしているか
- 第三者管理や立入管理が成立しているか
- 補助者機能や監視体制を維持できるか
- 中止判断を現場で実行できるか
- 後から説明できる運航設計になっているか
追加基準は、制度を知るための入口です。
実務では、その先にある運航成立まで設計する必要があります。
◆ドローン運航は『事後説明』を前提に設計する◆
法人案件では「飛ばせるか」だけでは進まないことがあります
ドローン運航は、許可が取れるかだけでなく、現場で最後まで成立するかで判断する必要があります。
- 第三者管理は維持できますか?
- 監視体制は機能しますか?
- 中止判断は定義されていますか?
- 発注者・関係者への説明は通りますか?
これらが整理されていない案件は、許可があっても現場で止まる方向に傾きます。
※飛行許可申請のみのご相談にも対応しています

