ドローン東京湾空撮が困難を極める4つの壁:矢野事務所

ドローン東京湾空撮が困難を極める4つの壁:矢野事務所

 

法人・自治体案件のご担当者さまへ
業務での飛行は「飛ばせるか」だけでなく、飛行可否判断/通報設計/説明整理が必要になる場合があります(個人のご相談も可)。

はじめに:ある空撮プロジェクト

先日、あるクライアントから、東京湾岸エリアの新たなランドマークとしてリニューアルされたTOYOTA ARENA TOKYOの空撮プロジェクトに関するご相談を受けました。

当初の計画は、建物の雄大な姿を海上からドローンで撮影するという、非常に魅力的なものでした。

しかし、このプロジェクトは、私たちが想像していた以上に多くの障壁に直面することになります。

今回はその実例を基に、特に東京湾岸のような都市部でドローンを飛行させることが、いかに困難を極めるかを解説していきます。

許可取得を阻んだ「4つの壁」

計画を実現すべく、関係各所との調整を開始しましたが、次々と厚い壁が立ちはだかりました。

壁1:離着陸地の確保(土地管理者)

海上を飛行させるためには、まず安全に離着陸できる場所を陸地に確保しなければなりません。

しかし、現場周辺を調査すると、唯一の候補地となりうる場所から海上へ抜ける飛行経路の直下が、広大な海浜公園となっていました。

公園の上空を許可なく飛行させることは当然できません。

ドローン飛行の基本中の基本である「離着陸場所およびその周辺の土地管理者の許可」という最初のハードルを、この時点でクリアすることができませんでした。

壁2:港湾エリアの規制(法律面)

次に検討したのは、近隣の埠頭を離着陸場所として使用できないか、という点です。

しかし、周辺の埠頭は民間企業の敷地であっても、その全てが東京都港湾局の管理下にありました。

港湾局へ問い合わせたところ、安全管理上の理由からドローンの離着陸許可は下りないとの回答でした。

ドローン飛行には航空法だけでなく、このように港湾法や港則法といった、場所ごとの個別法規が大きく関わってきます。

壁3:公共交通機関の上空(事業者)

さらに、別の飛行ルートを模索する中で、ゆりかもめ(東京臨海新交通臨海線)の軌道を上空で横断する必要性が生じました。

これについて鉄道事業者と交渉を重ねましたが、安全運行を最優先する観点から、やはり許可を得ることはできませんでした。

鉄道や高速道路、高圧電線といった重要インフラの上空を飛行させるには、航空法の手続きとは別に、そのインフラを管理する事業者との極めて慎重な調整と許可が不可欠となります。

壁4:代替案のコスト(費用面)

陸からのアプローチがことごとく絶たれ、関係者から同情的に勧められたのが「船をチャーターして海上から離陸させる」という方法でした。

これは規制上は有効な手段です。

しかし、見積もりを取ったところ、チャーター料金はわずか2時間で約20万円だそうです。

今回のプロジェクトの予算とは見合わず、コストという現実的な壁によって、この代替案も断念せざるを得ませんでした。

最終的な着地点と教訓

今回の調整において、最終的に私たちの計画の多くは「NG」という結論に至りました。

しかし、海上からの撮影は断念せざるを得ませんでしたが、プロジェクトが完全になくなったわけではありません。

敷地内飛行という現実解

最終的に、クライアント、そしてトヨタアリーナの管理者様と協議を重ね、飛行範囲を「建物の敷地内上空」に限定することで、必要な許可を取得し、無事に空撮業務を完了させることができました。

当初の計画とは変わりましたが、安全を最優先した現実的な着地点です。

事前調査(FS)の徹底を

この事例から得られる最大の教訓は、ドローン飛行計画における事前調査(FS:フィジビリティ・スタディ)の圧倒的な重要性です。

特に都市部では、航空法をクリアするだけでは全く不十分です。

土地の管理者、インフラ事業者、関連する個別法規など、事前に調査し、クリアすべき項目が山積しています。

まとめ

華やかに見える都市部でのドローン空撮ですが、その裏側では、今回ご紹介したような無数の規制や権利関係者との地道な調整作業が存在します。

東京湾岸エリアのような場所では、それらが特に複雑に絡み合っているのが現実です。

安易な計画は、時間と労力を浪費し、結果的にプロジェクトの頓挫を招きかねません。

このような難易度の高い飛行を計画される際は、専門家へ相談することも含め、周到な準備と調査を徹底することが成功への道と言えるでしょう。

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