
自治体委託仕様書の運航管理者欠落リスク
近年、自治体業務におけるドローン活用は、災害対応、インフラ点検、巡視、イベント記録など、さまざまな分野に広がっています。
これに伴い、ドローン運用を外部事業者へ委託するケースも一般的になりました。
一方で、自治体が用いる委託仕様書を確認すると、安全管理に関する記載はあるものの、「運航管理者」という役割が明確に位置付けられていない例が少なくありません。
本記事では、なぜ委託仕様書に運航管理者が明示されにくいのか、そして明示されないことが生む行政リスクを、行政書士の視点から整理します。
このページで分かること
委託仕様書に「運航管理者」が書かれない主な理由
① 技術要件中心で設計されているため
多くの委託仕様書は、機体の性能、飛行方法、許可・承認の有無、安全対策の実施内容など、技術要件を中心に構成されています。
その結果、「誰が運航全体の安全を統括するのか」という体制・責任の所在が、仕様書上で十分に言語化されないままになりがちです。
②「操縦者=責任者」と暗黙に想定しているため
委託仕様書では、操縦者・補助者・監視者といった現場役割は列挙される一方、それらを統括する管理者の存在が区別されないことがあります。
しかし実務上、操縦者と運航全体の安全判断を担う者は、本来別の役割です。
③「事業者の内部体制」に踏み込むことを避けているため
自治体側として、事業者の内部の責任分担に過度に踏み込むことを避けたい意識が働くことがあります。
その結果、「安全管理体制を構築すること」などの抽象表現にとどまり、運航管理者という具体的役割の明示が見送られるケースがあります。
しかし「明示されないこと」自体がリスクになる
① 事故発生時に責任の所在が不明確になる
事故やトラブルが発生した場合、行政が必ず問われるのは、
- 誰が運航可否を判断したのか
- 誰が中止判断を下せたのか
- その判断はどの基準に基づいていたのか
委託仕様書に運航管理者が明示されていない場合、これらについて合理的な説明が困難になります。
② 委託先選定の合理性を説明しにくくなる
自治体は「なぜこの事業者を選定したのか」について説明責任を負います。
運航管理体制が仕様書へ落とし込まれていないと、安全体制の評価軸が曖昧になり、選定の合理性を説明しづらいという問題が生じます。
③ 安全管理が属人的になりやすい
運航管理者が明示されないまま運用すると、現場判断に依存する「属人的運用」に陥りやすくなります。
平常時は問題が見えにくい一方、異常時・緊急時に脆弱性が露呈しやすい点に注意が必要です。
委託仕様書で検討すべき視点
委託仕様書は、単なる技術要件書ではなく、行政リスク管理の観点からも、少なくとも次の視点を整理しておくことが望まれます。
- 運航全体の安全判断を統括する責任者(運航管理者相当)の有無
- その者が持つ判断権限(中止判断・緊急対応等)
- 運航管理に関する文書(運航規程・マニュアル等)の整備状況
- 記録・報告・改善の責任主体
これらを具体的役割として言語化することで、委託仕様書は行政リスク管理文書としての性格を持つようになります。
重要なのは「人」ではなく「体制」
運航管理者とは、特定の個人名を指定することが目的ではありません。
重要なのは、誰かが必ずその役割を担う体制になっているか、判断権限と責任が整理されているかという構造です。
委託仕様書にその構造が反映されているかどうかは、自治体にとっても、事業者にとっても、長期的なリスクを大きく左右します。
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行政・自治体案件に関するご相談
自治体業務におけるドローン委託では、「どこまで仕様書に書くべきか」「体制をどう整理すべきか」が後から問題になるケースが少なくありません。
本記事で整理したような運航管理者を前提とした体制整理や、委託仕様書における安全管理の考え方について、行政書士として実務の視点から整理・確認のご相談に対応しています。
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※ 本記事は、ドローン関連法令および行政実務を扱う行政書士が、自治体業務における安全管理・運航体制の整理を目的として執筆しています。
























