ドローンFPV無線業務用開局と主任無線従事者制度:矢野事務所

ドローンFPV無線業務用開局と主任無線従事者制度:矢野事務所

 

法人・自治体案件のご担当者さまへ
業務での飛行は「飛ばせるか」だけでなく、飛行可否判断/通報設計/説明整理が必要になる場合があります(個人のご相談も可)。

FPV時代の到来

近年、ドローンの世界ではFPV(First Person View)が大きな注目を集めています。

パイロットがゴーグルを装着し、ドローンからの映像をリアルタイムで見ながら操縦するそのスタイルは、これまでにない没入感とダイナミックな映像表現を可能にしました。

この技術革新は、単なるホビーに留まらず、レースや空撮、さらには産業分野へと急速にその活用範囲を広げています。

先日、FPV専門のドローン教育機関が開校し、無線開局申請のご依頼を頂きました。

FPVドローンを業務で活用する上では、航空法だけでなく「電波法」の規制が大きな壁となり、手続きが面倒なことが背景にあります。

今回は、この教育機関の事例を基に、業務用FPVドローンに不可欠な無線局の開局申請と、その運営を円滑にする「主任無線従事者制度」について解説していきます。

FPVドローンと無線局免許

なぜ無線局免許が必要か

FPVドローンが送信するリアルタイム映像は、電波に乗せて送られます。

日本国内で一般的に使用される5.6GHz~5.8GHz帯の周波数は、国内の電波法上、免許がなければ使用できません。

無免許で使用した場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金という罰則が科される可能性があります。

この電波を利用するには、主に二つの方法があります。

  1. アマチュア無線局の免許を取得する
    第四級アマチュア無線技士以上の資格を取得し、アマチュア無線局として開局する方法です。趣味の範囲での利用(非営利目的)に限定されます。
  2. 業務用無線局の免許を取得する
    空撮や点検、測量、教育事業など、業務としてFPVドローンを利用する場合は、こちらの業務用無線局の開局が必須となります。

今回の教育機関のケースでは、事業としてFPVドローンの訓練を行うため、当然ながら業務用無線局の開局申請を行うことになりました。

具体的には、訓練で使用するVTX(映像送信機)を搭載したドローン2機及びゴーグル2機分の無線局免許の申請です。

注:ゴーグル(受像機)でも送信機能がついていれば申請の対象です。

業務用無線局開局の実際

業務用無線局の開局は、アマチュア無線と比較して手続きが複雑な面もありますが、大まかな流れは以下の通りです。

  1. 無線局免許申請書の作成・提出
  2. 総合通信局による審査
  3. 免許状の交付

これらの手続きを円滑に進めることも、我々行政書士の役割の一つです。

業務でドローンを運用する場合、海外製の高出力なVTX等、技術基準適合証明(技適)のないものを使用するケースも多く、その場合は特定の手続きが不可欠となります。

日本アマチュア無線振興協会(JARD)の手続きが必要です。

主任無線従事者制度とは

制度の概要とメリット

ここからが本題ですが、今回の教育機関の事業運営の鍵となるのが「主任無線従事者制度」の活用です。

主任無線従事者制度とは、特定の資格を持つ者を「主任無線従事者」として選任し、その監督下であれば、無線従事者の資格を持たない者でも無線設備の操作を行えるようにする制度です。

通常、業務用無線局の無線設備を操作するには、その無線局の種別に応じた無線従事者免許が必要です。

しかし、この制度を活用すれば、資格を持つ監督者が一人いれば、複数の無資格者(受講生等)が同時に操作(訓練)を行うことが可能になります。

教育機関での活用事例

この制度がドローンスクールにとっていかに有用か、お分かりいただけると思います。

受講生一人ひとりが無線従事者免許を取得してからでないと訓練が始められないとなると、FPVスクール運営のハードルは非常に高くなります。

しかし、主任無線従事者制度を導入すれば、受講生が無免許の状態からでも、合法的にFPVドローンの操縦訓練を開始できるということです。

今回の事例では、まず事業主様が第一級陸上特殊無線技士(陸特1)の資格を取得してもらって、その方を主任無線従事者として選任する届出を総合通信局へ提出することになります。

これにより、法的にクリーンな形で、実践的なFPVドローン教育事業をスタートさせることが可能となります。

陸特1級の取得方法

主任無線従事者の要件となる陸特1級ですが、取得するには主に二つの方法があります。

  1. 国家試験を受験する
    公益財団法人日本無線協会が実施する国家試験に合格する方法です。試験科目は「無線工学」と「法規」の二つで、マークシート形式で行われます。独学で知識を習得し、自分のペースで受験できるのがメリットです。合格率が約30%〜40%と難易度は低くはありませんが、過去問の出題傾向が似ていることもあるため、過去問対策が有効のようです。「陸特3を持っている方なら十分に合格できるレベル」、、、と知人の取得者が言っています。
  2. 養成課程を修了する
    総務大臣の認定を受けた機関が実施する「養成課程」を受講し、修了試験に合格する方法です。数日間の講習で集中的に学ぶことができ、修了試験の合格率も一般的に高いとされています。費用はかかりますが、短期間で確実に資格を取得したい方に向いています。

どちらの方法を選ぶかは、ご自身の知識レベルや学習スタイルによって決めるとよいでしょう。

資格取得後、「主任無線従事者選任(解任)届」を作成し、管轄の総合通信局へ届け出ることで、この制度の運用を開始できます。

無資格者訓練の法的根拠

電波法第39条第1項

「本当に無資格で大丈夫なのか?」と不安に思われる方もいるかもしれません。

この運用の法的根拠は、電波法第39条第1項のただし書きに明確に規定されています。

電波法 第三十九条第1項の主旨

・・・・ 無線設備の操作は、無線従事者でなければ、行つてはならない。ただし、・・・総務省令で定めるところにより、主任無線従事者の監督を受けて行う場合は、この限りでない。

この条文により、主任無線従事者による適切な監督があれば、無資格者の操作が例外的に認められているのです。

監督の具体的な方法

ただし、「監督」とは、ただその場にいるだけで良いというわけではありません。

主任無線従事者には、以下のような具体的な監督責任が求められます。

  • 訓練計画の策定と確認
    無線設備の操作範囲や訓練内容を事前に把握し、計画を立てる。
  • 現場での指揮・監督
    訓練中は無資格者の操作を常に監督できる体制を確保し、不適切な操作がないか監視する。
  • 緊急時の対応
    電波の混信や機材トラブルなど、不測の事態が発生した際に、操作の中止を含め適切な指示を行う。
  • 無線設備の管理
    免許された無線設備が適切に使用・管理されているかを確認する。

これらの責務を全うすることで、初めて安全かつ合法的な無資格者による訓練が成り立ちます。

未来のFPVパイロットへ

FPVドローンが切り拓く可能性は無限大ですが、航空法と電波法という二つの大きなルールを正しく理解し、遵守することが不可欠です。

特に、ドローンをビジネスに活用しようとする事業者にとって、今回ご紹介した「主任無線従事者制度」は、人材育成や事業運営の効率を飛躍的に高める強力なツールとなり得ます。

関連記事:ドローンFPVスクール開業の鍵は主任無線従事者

正しい知識と手続きをもって制度を活用すれば、安全を確保しながら事業を大きく成長させることができるでしょう。

無線局の開局申請や各種許認可手続きなど、ご不明な点があれば、ぜひ一度、我々のような専門家にご相談ください。

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